我々医師は、様々な治療に対して患者様から金銭を頂きます。
赤ヒゲ先生のような医師であれば別ですが、仕事として診療をしている以上、対価は発生します。
当院では診察費も頂いております。初診、再診ともにです。
診察費無料という所もあるようですが、多くの場合は医師ではないカウンセラーが話を聞いて、色々な治療プランを組む・勧めてくることになります。
診察費というのは保険診療でも認められた医療技術です。弁護士の先生に相談に行けば相談料がかかるのと同じく、医師としてその医学知識によって診察をすれば対価としての費用は発生します。
治療に関しても同様です。保険医療では研修医でも教授でも、どの医師が治療をしても手術代は同じであり、これが病院における医師の疲弊を招き、諸問題を発生させていると言われていますが、美容医療の場合は自由診療で、クリニック毎に治療費は異なります。
しかし高額だから患者が満足するとは限らず、それゆえ「高い」の逆が「良心的」と言われがちです。ではどう考えるのが妥当なのか。
レストランと同じと考えます。フランスに行って長年修行を積んで、色々な知識と技術を持ってレストランを経営しているシェフがいる店と、そのような修行はなく、最初の数年働いた上で開業した何となく調理しているシェフ、もしくはバイトが調理しているようなレストランで食事代が同じでなければいけないと考える人は少ないでしょう。修行を積んだシェフは、若い頃苦労してフランスに行って修行し、色々な知識を吸収し、また帰国後も研鑽を積んだから、それだけの対価をもらって当然だし、料理も美味しいのです。
そのシェフの経歴(修行)、そしてそれを維持するにかかるお金(毎年フランスに行くとか)が料理代に加味される事をおかしいという人は少ないでしょう。
医師でも、病院勤務で下積みをしてしっかり研修し、学会にも参加し海外にも勉強に行く医師であれば、それなりに技術も経験もある上、かかる費用もあり、治療費がそれなりの金額になりますが、それを良しと思わない人もいます。。。。シェフ自らが調理してくれれば、それなりのお金を払うでしょうし、材料が同じだから皿洗いの若手に作ってもらって安く済ませるという人は少ないでしょう。
しかし、医師がその持てる知識と技術を発揮して治療をしてくれるよりも、1週間前に入職した看護師によって施術を受けて安く済ませたいという人は沢山います。食べログの記載を見ても、美味しいお店なのにコストパフォーマンスが悪い、とか単に高いから最低と書かれていることもあります。中には値段が価値の判断基準という人ももちろんいます。
我々の仕事もそれと同じで、安くない治療で効果が弱ければ、即悪徳と言われることもあります。意味もなく高い内装で味は美味しくないのに、その雰囲気で(短期に)流行っているレストランもあります。
内装もサービスの一つであり、医療でも最近そのようなことが叫ばれていますが、このあたりはどう考えるべきでしょうか。メディアに頻繁に取り上げられるもしくはタイアップされているレストランは流行に乗って大繁盛になる事が多いですが、美味しくて取材されるレストランと、なにがしかの力で取材されるレストランがあります。イケメンシェフなんてのも「あり」です。
美容医療でも同じく、腕もありメディア対応も上手な医師もいれば、何となく立派そうに見えるがその専門性に乏しい医師もいます。「綺麗」が売りの医師も。高いワインを頼めば美味しいと考える人もいます。間違いではないですが、何事も常識の範囲があります。通常の価格設定ではそんなにしないはずでも、豪華な雰囲気で高い価格設定を見るとつい注文して、美味しいと思い込んでしまうこともあります。そういう所で食事できるという「選ばれた」意識が強いのでしょうか。
美容医療でも、常識的にあり得ない高額設定の治療を受けて、そのラグジュアリーさと高額費用だけですごい治療を受けているように勘違いしてしまう。本当に妥当な費用なのでしょうか、そこまで違うものでしょうか。
以上、色々書きましたが、レストランと美容医療には決定的に大きな違いがあります。
医療行為の場合は「味覚」以上に、効果の評価が主観的で曖昧であり、また医師と患者サイドの意識のずれも大きいものです。
患者様の話をきちんと聞き、悩みにきちんとフィットした治療が出来るかどうかも、診療技術の一つと言えます。そのあたりが難しいところです。
偉そうに書いた私は、、、、
一応色々勉強はしてますが、まだまだ未熟な部分は沢山あります。
本当の一流シェフのように、人としても優れ、腕も最高峰、そうなりたいです。
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美容医療における医師の技術・治療と対価
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