本日と明日午前はクリニックを休診にさせて頂き、学会に参加しています。
日本創傷外科学会 in 京都 です。
今回は会長の京都大学形成外科教授 鈴木茂彦先生の方針で、基礎研究のシンポジウムが沢山組まれていました。
私は一応、この学会の専門医です。なぜ美容外科医が参加するのかと思う方もいるでしょう。実際、今回参加している美容外科医はほんの僅かです。
しかし、創傷治癒の研究は、コラーゲン・ヒアルロン酸などの細胞外器質や様々な成長因子など、実は美容医療においても重要な物質について知識を深める絶好のテーマなのです。
私自身、勤務医時代にはこれらの研究をしており、医学博士もケロイドの線維芽細胞についての研究で取得しました。創傷治癒を知ることこそがアンチエイジング・美容医療のキーポイントだと思っていますし、自分自身のキャリアの中で、このことを基礎から学んだことはとても役に立っています(機械オタクなだけじゃないのです)。しかしながら研究というのは日進月歩で、定期的に勉強しないと全く時代遅れになってしまいます。
今回の学会の講演でも、様々な演者が老化との関連性について触れていました。
まだ初日ですが、最も感銘を受けたのは特別講演の関西医科大学薬理学教授、中邨智之先生による弾性線維(エラスチン)についての講演です。加齢による劣化・断裂についてや弾性線維の構造・構築の機序など非常に勉強になりました。
珍しく、沢山メモを取りましたが、まだまだ分からないことだらけで復習は必要....
我々の業界では、レーザーや高周波などで「コラーゲン」が増えたという報告は数多くあります。しかし熱によってダメージを受けて傷を治すように増えた場合、その量的な評価だけではなく質的・構造的評価をしなければいけないと常日頃から思っており、学会でも質問をしてきましたが、明確な答えを得られたことはありません。さらにはエラスチンの増加・構造などについてとなると、もっと未知の分野です。
今回はエラスチンの構造とエラスチンの線維化(弾性線維)について基礎から分かりやすく講演をして頂き、今まで疑問に思っていたことを解決するヒントを幾つか頂けました。
もちろんエラスチンの化粧品やサプリでは弾性線維が増えることはありません。そして例えエラスチンが増えたとしても、その本来の役割である皮膚弾性を作る線維化構造は出来得ないのです。
将来的にそれが可能になるかもしれないある種の蛋白について、その役割を詳しく聴けたのが大きな収穫でした。
我々美容外科医がおこなっている熱による破壊治療だけでは解決できない部分、ひょっとしてテノールなどの緩徐な熱発生においてはこれらを誘導できるのかもしれませんが、まだまだ検証も必要ですし、その前に基礎分野で証明されないといけない問題が山積みです。
しかし、効果を判定する上でも、また根本的なアンチエイジングの面においても、指標となる物質の特定は重要です。
もちろんここで言うアンチエイジングは、皮膚だけの問題ではなく、肺気腫・動脈硬化などの弾性を有する組織の老化にも当てはまります。これらの疾患が改善される治療はまた皮膚の弾力の改善にも結びつくのかもしれません。
ちょっとマニアックになってきましたので、続きはまた次回。まだまだ面白い話は沢山ありましたし、また明日も拝聴してきます。
しかし、京都は暑いです。体温超えてます
--------------
私の執筆した医学書です。同業者の方々、宜しくお願いします。
イチからはじめる美容医療機器の理論と実践/宮田成章
¥6,300
Amazon.co.jp
↧
日本創傷外科学会参加
↧