先週は夏期休診。久々に仕事を忘れてリフレッシュしてきました。
お盆休みという事もあって今週前半は手術も多く、バタバタしています。
来月、MBFという美容医療系研究会で私個人の開業にまつわる講演をすることになっています。
思えば15年前、北海道の片田舎から東京へ出てきて、医療法人のクリニックで院長を務めた際、私自身が今後の自身のテーマとして打ち込もうとした医療というのが、「形成外科・美容外科とスキンケアの融合・統合」でした。
その当時は形成外科や美容外科は手術第一、というのが一般的でした。一方の皮膚科は美容医療に対しては熱心ではなく、手術以外の手法で美容医療をするという考えはまだまだ認知されていない時代でした。
形成外科医が「肌」のことを熱心に治療すること自体、「外科医を捨てた」ような物言いをされたものでした。しかしながらその当時、レーザー脱毛が流行し、これをビジネスとしてのみ考えた医師は多かったようですが、他にフォトフェイシャル、ヒアルロン酸注射など様々な手法が揃いだし、レーザー機器をはじめとした非手術的な手法が美容医療の主役になっていくであろうことが私の中では確信というものになっていました。
もちろん当時は手術も多く、今とは状況は違いました。
埋没式二重の手術のうち挙筋法というもののオリジナルとも言える武藤法を故武藤靖夫先生から教わっていたこともあって、二重の手術が非常に多く、またわきがの手術(現在は実施しておりません)や、個人的に好きだった鼻尖(鼻先)形成などなど、普通の美容外科医としての仕事も大きなウェイトを占めていました。
しかし、2002年頃からプチ整形などという言葉が登場し、それに合わせてレーザーや注入系の治療が雑誌などのメディアで特集され始めました。当時は沢山のメディアに取材を受けたものです。
医師のような専門家の間で流行ることと、一般のレベルで流行ることでは意味合いが大きく異なります。一般に認知され出したということは「大きな山」が動くという事です。
以後の美容医療の興隆は皆さんの知るところであると思います。
世界的にも、手術よりもずっと気軽な非外科的美容医療が主役となりつつあり、いわゆる顔立ちを変える治療を主とする美容医療は、肌をきれいにする、アンチエイジングをする美容医療へと変貌していきました。
その時に私が謳った当院のキャッチフレーズが「お肌の主治医」でした。
今では当たり前のような言葉ですが、手術は一期一会であり、リピートする患者様は多くありません。一方のスキンケアは継続性が重要、つまり長く通院して頂き、その患者様の肌状態を最もよく知る「主治医」としてお付き合いさせて頂く事が主となります。当院では15年通って頂いている患者様も稀ではなく、皆様と長いお付き合い、つまり肌の主治医としてのお付き合いをさせて頂くことも多くなりました。有り難いことです。
そして時代は肌のみではなく顔の輪郭や質感も含めた全体の管理、つまり「見た目の老化の主治医」も必要とするようになりました。
皮膚の変化のみに囚われず、顔貌全体、場合によってはボディも含めて加齢を考慮し診療していく必要が出てきたのです。
実際、機器治療は肌の質感や小じわ、シミのみではなく、たるみのような深いゾーンまで対応できるようになってきており、注入剤や糸(スレッド)の治療も発展してきました。
そして、自ら開業した11年前、この頃から機器治療においては数多くの画期的な機器が登場してきたため、経営を考えるよりも先に医療として必要ということで次々に機器を導入してきました。それが現在の当院のスタイルになった理由であると思います。
当時は色々言われましたが、現在ではそれが間違った選択肢ではなかったと思います。
ただ、機器だけを知っていても時代遅れです。顔面形態の改善には機器治療だけでは不十分です。そして何より、機器治療自体、その発展性には限界があり、革新的な機器は数年に一度登場するかどうかになりました。機器の専門家では、もはや美容医療の最先端には残れないのです。理論や蘊蓄が好きな私ですが、それだけでは美容医療をする専門家ではありません。
今の時代、注入剤や糸などをプロとして使いこなしていかないと駄目な時代です。
私自身も最初は機器に精通した専門医として進んできましたが、近年は注入剤・糸などでも新しい情報や手技を入手し、より積極的に実施をするようになりました。
やはりこれらは手技的なもの、手先の器用、不器用が大きく影響しますし、血管の走行などの解剖学的な知識も不可欠です。そういった意味で形成外科の専門医であること、この仕事をする前はバリバリの臨床医、外傷や癌切除後の修復再建などに情熱を燃やしていたことが役に立っています。
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お肌の主治医
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