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Channel: 美容外科開業医の独り言
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今年を振り返って:治療の流行2

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前回の続きです。

機器の具体的なお話し。
美容医療業界で今年もっとも大きな話題になったのはピコ秒レーザーです。海外の学会に参加すると、レーザー等機器で高名な医師は殆どの場合この機器のことを口にしました。
日本にいるとあまり実感はないのですが、世界の二大レーザーメーカー、シネロンキャンデラ社とサイノシュア社が競ってピコ秒レーザーを開発・販売、さらに技術力のあるメーカー(キュテラ社、クアンタ社など)も追随して販売という状況です。また他にも数社が開発中、もしくは発売間近と聞いています。
昨年、今年と海外へ行くことが多かったのは、このピコ秒レーザーの講演を聴きに行くためでもありました。海外に精通している医師ほど、ピコ秒レーザーがいかにエポックメイキングなものかを知っています。

もちろんピコ秒レーザーは商品名ではありません。フラクショナルレーザー、Qスイッチレーザーというジャンルと同じく、一つの新しいカテゴリーです。ピコ秒という短い時間に発振されるレーザーを用いて、従来のレーザーの主作用である「熱」を殆ど発生させずに対象物を破壊します。瞬間的に強いパワーを発生させるため、対象物は「粉砕」されます。粉々になるのです。これにはいくつかの理由があるとされています。例えばオーブンなどで加熱すると硬いもの(皿など)が割れてしまうことがあります。低い温度から徐々に加熱していけば割れることはありませんが、急に高温にしてしまうと粉砕したようになります(あくまで例えで、厳密に言えば若干異なります)。このような急激な膨張作用、また瞬時に強いエネルギーを照射することで音響効果、音圧による作用とも言うべき力での粉砕は従来の機器では得られなかったものです。専門的にはLIOBとも言われます。また短い時間の照射となると光エネルギーがプラズマを発生させます。プラズマは光とは違った特性を持ちます。
これらを利用した様々な効果が期待されていますが、まだまだ未解明です。
工学的には新しい技術ではありませんが、生体内にどう作用するのかは殆ど解明されておらず、これが非常に興味深く、多くの専門医が注目しています。

もちろん機器は非常に高額です。既存のレーザーが何台も買えます。そして従来からある治療法、例えば入れ墨やシミ、アザの治療に革新的な進歩を与える可能性がありますが、だからと言って治療費の単価を大きく上げることは難しいと思われます。利益追求型のクリニックではなかなか手を出せない機器と言えます。
私自身も医師とはいえ開業医。経営者ですから、その点は熟慮する必要がありました。しかし海外のドクターに何故この機器を購入するのか、今必要なのかと聞くと、その答えは「革新的治療機器だから、可能性を秘めた機器だから導入するのだ、目先の利益で決めるべきものではない。今買わないならレーザーのプロフェッショナルではない。」でした。
全く同感です。
今バリバリにレーザーを主として仕事をしている医師は、ピコ秒レーザーを導入しないというのは考えられないのですし、今買うことこそが、取るべき行動と言えるのです。

もちろん数年すれば機器の価格は下がっていくでしょうし、また治療結果がその価格差に相応のものであると確約されれば、多くの医師が日々の診療のため、患者へ最良の医療を提供する機器として、導入を開始すると思います。そうなる前に機器の可能性を見出し、また開発を含めた様々なデータを解析することがレーザーを主な仕事とする医師の責務であろうとも思います。
実際に欧米では入れ墨治療の需要が大きく、ピコ秒レーザーの効果は絶大であることが分かっているため、既に機器は非常に売れています(シミやアザなどで同様の効果が出たとなれば、日本でも機器の導入台数が増えてくるでしょう)。

ということで、当院でもピコ秒レーザーを導入しましたので、来年早々から治療を始める予定です。

また話しが長くなりましたので次回も続きを。

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