昨日は業者さん主催の少人数制のセミナーでの講演・デモンストレーションをしました。
セミナーはハイドロキシアパタイト注入剤のレディエッセについてです。当院での開催となりましたので、少人数制で時間を区切ってのマンツーマンに近い形式でした。
日常おこなっている環境と同じということで、私にとってはあまり違和感なく実施ができました。マーキングの道具や、マッサージ道具、電動リクライニング式の椅子など、やはり使い慣れたものであるほど施術の際の疲れが少なかったのは有り難かったです。
最近は注入療法も様々なものが登場しており、材質に関しては安全性もある程度検証されています。
しかし、長期使用してみないと分からないリスクなどもあるので、吸収性とは言え、生体にない人工物に関しては慎重にならざるを得ません。ヒアルロン酸・コラーゲン・ハイドロキシアパタイトは生体内に存在する物質ですので、異物性の肉芽腫などのリスクは極めて低いと考えられます(もちろん絶対にゼロとは言いません)。しかし高分子系の吸収性素材は、その形態・持続期間によっては異物反応を示す可能性があります。
以前もポリ乳酸系の吸収性注入剤が登場した際、安全性と長期持続性を売りにしていましたが、数年経ってから肉芽腫が発生してきました(肉芽腫はすぐではなく数年経ってから発生することも多いのです)。だから危険という意味ではないのですが、そのようなリスクもあることを承知した上で実施をする必要があります。
吸収性異物はウルトラVリフトの糸のように半年程度で吸収されるものであれば私自身は安全性が高いと考えます。特にウルトラVリフトの糸の材質はコラーゲン産生を刺激するという良い面(糸吸収後の効果持続や肌質改善)がありますが、コラーゲンを誘導する=線維化・異物反応です。長くそれが残ってしまうことは、異物反応を継続させてしまうことです。もっと長く持続したら良いのにと時々患者様が仰ることもありますが、やはりあまり長く持続するものというのは、忘れた頃に大きなトラブルを発生させるのです。1~2年以内に吸収されるものの方が安全です。
そして吸収されない異物の注入療法は、昔々オルガノーゲンという魔法の注入療法ともてはやされた物質による暗い過去があります。数年経ってからボコボコと歪んで、多くの患者様を苦しめたのです。これを治療するためというのが、我が国における形成外科誕生の歴史でもあります。今の物質はそこまで危険ではありませんが、やはり歪みや肉芽腫などのリスクがあり、それを外科的手法で除去できない場合には手立てが殆どありません。当院ではアキュスカルプというレーザーで除去はしていますが、完全に取れるわけではなく、また皮膚熱傷、大きな腫れなどの沢山のリスクがあります。
さらにはレディエッセという安全とされるハイドロキシアパタイト注入剤においても、類似品が一時登場しました。これはその顆粒形状が綺麗な形ではないために、そのギザギザの周囲に線維化が強く起こり、様々なトラブルを招いたため、市場から消え去りました。同様にヒアルロン酸でも安全性を考えると、あまり変なメーカーのものは使わない方が良いともされています(アレルギーを起こす蛋白の配合率が多いなど)。
新しい注入剤は、十分な知識をもって導入しないと危険であり、いつも海外などの情報を収集するようにしています。
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注入療法〜吸収性ということ〜
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